ArtCraftのCrafting Apps全13本まとめ|Adobe・Microsoftなどの無料代替はどこまで使える?【2026年版】

※2026年10月14日時点の情報です。数値や開発段階は GitHub の公式リポジトリ(storytold)の README・ROADMAP によるもので、弊社が実機で確かめたのは今のところ PhotoCraft だけです。各アプリはほぼ毎日新しい版が出ているため、最新の状況は公式の GitHub で確認してください。

Adobe や Microsoft のソフトは、使い続ける限り毎月の費用がかかります。たとえば Photoshop は単体プランでも月額3,280円、複数の Adobe アプリをまとめて使える Creative Cloud Pro は月額9,080円(Photoshop は年間プラン月々払い、いずれも税込)、Word・Excel・PowerPoint を使う Microsoft 365 Personal は月額2,130円(月額プラン・税込)、AutoCAD は1年契約で84,700円(税込)です(2026年10月14日に各社の日本向け料金ページで確認)。

そこへ2026年9月末から10月にかけて、こうしたソフトの代わりを無料・オープンソースでゼロから作り直すという13本のアプリ「Crafting Apps」が、短期間にまとめて公開されました。PhotoCraft だけで GitHub のスターは約6万に達していますが、日本語の情報はまだほとんどありません。この記事では13本の全体像と、試す前の注意点を整理します。

ArtCraftとは:Crafting Appsを作るstorytoldのプロジェクト

ArtCraft は、GitHub の storytold という組織(公式サイトは getartcraft.com)が開発しているプロジェクトです。ArtCraft 本体は「アーティストのための IDE」をうたう、生成 AI で画像・動画を作るためのアプリです。

この ArtCraft のチームが、2026年9月末から10月上旬にかけて相次いで公開したのが、Adobe・Microsoft などの定番ソフトを Rust でクリーンルーム再実装(元のソフトのコードを使わずに作り直すこと)した13本です。ArtCraft 本体とは違い、13本はパソコンの中で動く普通のデスクトップアプリです。

PhotoCraft 0.8.2の起動画面。新規ドキュメント・開くのボタンやツール名が日本語で表示されている
13本のひとつ PhotoCraft の起動画面(v0.8.2、2026年10月14日に弊社の Mac で撮影)

上は13本のひとつ PhotoCraft を弊社の Mac で起動した画面です。

Crafting Apps全13本の一覧:何の代わりで、どこまでできているか

アプリ名のリンク先は、OSSMatch の各アプリの詳しいページです。

アプリ 何の代わりか 段階 実務に使える度合い(自己評価) 日本語の画面 実機レビュー
PhotoCraft Adobe Photoshop alpha(README は early alpha) 約45% あり(弊社で確認) PhotoCraftのレビュー
LightCraft Adobe Lightroom alpha 約61% あり LightCraftのレビュー
FilmCraft Adobe Premiere Pro alpha 約56% あり FilmCraftのレビュー
VectorCraft Adobe Illustrator alpha 約62% あり VectorCraftのレビュー
DesignCraft Adobe InDesign pre-alpha 約47% あり(キャンバスでの日本語入力に未解決の課題) 近日公開
EffectCraft Adobe After Effects alpha 約45% 一部(全体の約27%) 近日公開
PdfCraft Adobe Acrobat alpha 約49% あり PdfCraftのレビュー
WordCraft Microsoft Word alpha 約60% あり WordCraftのレビュー
GridCraft Microsoft Excel alpha 約50% 一部(メニューのみ、約12%) GridCraftのレビュー
DeckCraft Microsoft PowerPoint alpha 約55% なし(スライドの日本語は表示・入力可) DeckCraftのレビュー
CADCraft AutoCAD pre-alpha 約38% なし CADCraftのレビュー
SoundCraft Avid Pro Tools pre-alpha 約40% なし 近日公開
FigCraft Figma alpha(README は early alpha) 約53% あり(機械的な下書きの訳) FigCraftのレビュー

「段階」と「実務に使える度合い」は、各リポジトリの ROADMAP.md にある「Stage」と「Ready for real work」の値です(2026年10月14日に確認)。後者は、元のソフトの代わりとして実際の仕事にどこまで使えるかを開発元が見積もった推定値で、第三者が測った数字ではありません。日本語の画面は、各リポジトリの翻訳ファイルと開発元の資料(docs/localization-parity.md など)によるもので、弊社が実機で確かめたのは PhotoCraft だけです。

ArtCraftのCrafting Apps 13本について、元のソフト、開発段階、開発元が見積もった実務に使える度合い、日本語の画面の有無を並べた一覧図
13本の一覧(2026年10月14日時点)。段階と割合は各リポジトリの ROADMAP.md による開発元の推定値

表を見ると、13本すべてが alpha か、それより前の pre-alphaです。自己評価で6割を超えるのは VectorCraft と LightCraft だけで、多くは4〜5割台です。PhotoCraft の README が「日々のプロの仕事で Photoshop の代わりになる段階ではない」と書いているように、開発元自身が未完成であることを率直に示しています。

13本に共通する特徴:Rust製・無料・パソコンの中で動く

  • ライセンス:README の表示はいずれも MIT または Apache-2.0 のデュアルライセンスで、商用利用もできます(ArtCraft の名前とロゴは商標で対象外)
  • 作り:すべて Rust で一から書かれたネイティブアプリ。PhotoCraft・WordCraft などの README には「Electron も Web ビューも使わない」とあります
  • 動く場所:macOS・Windows・Linux・FreeBSD 用のほか、ブラウザで動く版もあります。アカウントやクラウドなしで、パソコンの中だけで使えるのが基本です
  • 操作感:メニューやショートカットを元のソフトに近づけて作っています。多くはコマンドライン版や MCP サーバーも備えます
  • 更新の速さ:ほぼ毎日新しい版が出ています。便利な反面、挙動が短期間で変わることは覚えておきたい点です

13本をまとめて管理するための ArtCraft Launcher(リポジトリ名は craft-launcher)も公開されています。README によると、OS と CPU に合った公式の版を選び、チェックサム(SHA-256)と照合してからインストールし、更新も知らせてくれます。画面は日本語にも対応しているとされますが、README の表示は early alpha で、弊社では未検証です。

安全な入手方法:偽の配布リポジトリ「ArtCraft-Corp/ArtCraft」に注意

話題のソフトには、名前を似せた配布ページがつきものです。GitHub には「ArtCraft-Corp/ArtCraft」という、公式ではないリポジトリが現れており、説明文に「Official free download」と書いて Windows 用の zip を配っています。弊社は中身を取得していませんが、storytold とは関係のない配布元からのファイルは実行しないでください。

公式の入手先は次の2つだけです。

  • GitHub の github.com/storytold/<アプリ名> の Releases(例:github.com/storytold/photocraft/releases)
  • 公式サイト getartcraft.com の各アプリのページ

Releases には各ファイルのチェックサム一覧(SHA256SUMS.txt)が置かれています。ダウンロードしたファイルと照合すれば、途中で差し替えられていないかを確かめられます。

弊社がPhotoCraftを実機で試した結果

13本のうち、いちばん注目を集めている PhotoCraft(Photoshop の代わり)は、弊社の Mac(macOS 27.0.1、Apple シリコン、メモリ24GB)で v0.8.2 を実際に試しました。要点は次のとおりです。

  • 公式の dmg はチェックサムが一致し、Apple の公証(ノータライズ)済み。署名の名義は「Learning Machines LLC」
  • 設定を変えずに最初から日本語の画面。新規レイヤーの既定名など一部は英語のまま
  • PhotoCraft で作った PSD は、文字・図形・効果・色調補正が Photoshop と同じ形式のレイヤーで保存された
  • Photoshop で作られたテスト用 PSD 6種のうち5種は、Photoshop が保存した完成画像とほぼ同じ描画。CMYK の1種は色に差が出た
  • ただしテスト用ファイルは開発元もテストに使っているもので、実務の PSD で同じ結果になるとは限らない

画面付きの詳しい結果は「PhotoCraftを実機検証|無料のPhotoshop代替はPSDを開ける?」にまとめています。テスト用ファイルでは高い再現度でしたが、それでも公式の表示は early alpha で、「Photoshop がないパソコンで PSD を開く・少し直す」用途から試すのが現実的というのが弊社の結論です。

Crafting Appsはどれから試すのがよいか

13本とも開発途中なので、「元のソフトの補助として触ってみる」前提で選ぶのがおすすめです。日本語で使う場合の目安は次のとおりです。

  • まず PhotoCraft:弊社で日本語の画面と PSD の扱いを確かめ済み。13本の中で GitHub のスターがいちばん多く、情報も集まりやすい
  • 次の候補は VectorCraft・LightCraft・WordCraft:自己評価が6割前後と13本の中では高く、日本語の画面もある
  • PdfCraft・FilmCraft・FigCraft:日本語の画面はあるが、PdfCraft は既存の日本語の文字の書き換えが弱い、FigCraft の日本語訳は下書き段階など、資料上の注意点がある
  • 後回しでよいもの:pre-alpha の DesignCraft・CADCraft・SoundCraft と、日本語の画面が一部だけかまだない GridCraft・DeckCraft・EffectCraft。英語の画面に抵抗がなければ試す価値はあるが、日本語での作業には課題が残る

仕事のデータで試すときは、必ず元のファイルのコピーを使ってください。安定した無料ソフトが必要なら、GIMP・Krita・darktable・Shotcut など長年の実績があるオープンソースも候補です。違いは「Adobe Photoshop のオープンソース代替」などの比較ページで紹介しています。

まとめ:ArtCraftの13本は「今後に期待しながら試す」段階

ArtCraft の Crafting Apps は、定番ソフトの代わりを無料・オープンソースで作り直す野心的な取り組みで、PhotoCraft のようにテスト用ファイルで高い再現度を示すアプリもあります。一方で、13本すべてが alpha 以前の開発途中で、開発元自身の見積もりでも実務での置き換えは4〜6割程度です。いまは「元のソフトの補助として試し、成長を見守る」のがちょうどよい付き合い方でしょう。

弊社では今後、PhotoCraft に続いて各アプリを順に実機で検証し、日本語の画面・日本語の入力・元のソフトのファイルの読み書きを確かめていく予定です。結果はこの記事と、各アプリの OSSMatch のページ(上の一覧表のリンク)に順次反映します。