VectorCraftを実機検証|無料のIllustrator代替は.aiとSVGを扱える?日本語で試した【2026年版】

※2026年10月14日時点の情報です。VectorCraft v0.10.0(2026年10月13日公開、日本時間)を、弊社の Mac(macOS 27.0.1、Apple シリコン、メモリ24GB)にインストールして確かめました。VectorCraft はほぼ毎日のように新しい版が出ているため、最新の状況は公式の GitHubで確認してください。

Illustrator は単体プランの年間プラン(月々払い)でも月額3,280円(税込)、Illustrator を含む Creative Cloud Pro なら通常月額9,080円(税込)かかります(2026年10月14日に Adobe 日本の料金ページで確認)。「ロゴや図版をたまに作る」「SVG を少し直す」だけなら、もっと軽い選択肢が欲しいところです。

そこへ2026年9月末、Illustrator を作り直したとうたう無料のオープンソース「VectorCraft」が公開されました(GitHub のスターは10月14日時点で8,727)。日本語で使えるか、図形と文字を描けるか、そしてSVG と Illustrator の .ai ファイルをどこまで扱えるかを試しました。

結論:VectorCraftはSVGと日本語が使える。ただし.aiのやり取りはまだ

確かめたこと 結果
入手・安全性 GitHub の公式配布物。Apple の公証(ノータライズ)済みで、チェックサムも一致
日本語表示 最初から日本語。一部(Essentials など)は英語
図形と日本語の文字 図形、横書き・縦書きの日本語を作れた
SVG の読み書き 日本語のグループ名がレイヤー名として読み込まれた。縦書きは書き出すと輪郭(パス)に
.ai の保存 中身は PDF 互換の .ai。Illustrator の編集データは書かれない(README に明記)
開発段階 公式の表示はalpha(お試し版)。公開から約2週間

日本語の画面のまま、図形・文字の作成から SVG の読み書きまで確かめられました。一方で、取引先と .ai ファイルをそのままやり取りする使い方は、開発元自身が「まだ確実ではない」と認めている段階です。「Illustrator の契約をやめる」のではなく、「SVG の図版やロゴを無料で作る・直す」ところから試すのが現実的です。

VectorCraftとは:ArtCraftが作るIllustrator互換の無料ソフト

VectorCraft は、AI 画像・動画ツール「ArtCraft」の開発チーム(GitHub の storytold)が作るベクターイラストソフトで、Photoshop 代替の PhotoCraft など計13本の「Crafting Apps」の1つです。

  • ライセンス:MIT または Apache-2.0(商用利用も可)
  • 作り:Rust で一から書かれた「クリーンルーム再実装」。ペンツール、パスファインダー、アピアランスなど Illustrator に近い道具をそろえるとしています
  • 対応形式:README によると独自形式(.vectorcraft)、SVG・PDF・PDF 互換の .ai の読み書きなど
  • 料金:無料。アカウント不要

注意したいのは名前の似た偽の配布ページです。GitHub には「ArtCraft-Corp/ArtCraft」という、Windows 用の zip を配る非公式のリポジトリが現れています。ダウンロードは github.com/storytold の Releases か、公式サイト getartcraft.com からにしてください。

VectorCraftのインストールと日本語表示を確認

GitHub の Releases から Mac 用の vectorcraft-0.10.0-macos-universal.dmg(約129MB)をダウンロードし、公式のチェックサム一覧(SHA256SUMS.txt)と照合して一致を確認しました。dmg とアプリの両方がApple の公証済み(Notarized Developer ID)と判定され、署名の名義は PhotoCraft と同じ「Learning Machines LLC」でした。

起動すると、設定を何も変えずに最初から日本語の画面が出ました。ようこそ画面の新規ファイルのひな形や、左のツールバーの「選択」「シェイプ」「描画」なども日本語です。

VectorCraft 0.10.0のようこそ画面。新規ファイル、開く、A4やWebなどのひな形、左のツール名が日本語で表示されている
ようこそ画面(VectorCraft v0.10.0、2026年10月14日に弊社の Mac で撮影)。設定を変えずに日本語で表示された

英語のまま残っていたのは、ワークスペース名の「Essentials」や、保存時の注意メッセージなどです。フォントの一覧には、Mac に入っているヒラギノなどの日本語フォントがそのまま並びました。日本語入力(IME)での入力は、今回は試していません。

VectorCraftで図形と日本語の文字を作る

800×500ピクセルの新しい文書に、背景の長方形、白い線の付いた円、星、六角形を置き、それぞれ色を付けました。文字は、横書きの「オープンソースで図版」(ヒラギノ角ゴシック)と、縦書きの「縦書きの見出し」(ヒラギノ明朝)を入れています。

VectorCraftで作った図版。紺色の背景に黄色い円、オレンジの星、緑の六角形、横書きの日本語と縦書きの見出しが並ぶ
図形と日本語の文字(横書き・縦書き)を作った画面(VectorCraft v0.10.0、2026年10月14日に弊社の Mac で撮影)

どちらの文字も、画面で正しく表示されました。README では、縦書き自体は「初期的な対応」で、縦組みの日本語組版(CJK composition)はまだ不足点に挙げられています。今回は縦書きの見出しを作れましたが、縦組みの本文をきれいに組む用途にはまだ向きません。

なお、フォントを「Hiragino Sans」とだけ指定した文字は、開き直したときに「見つからないフォント:Hiragino Sans Regular — W4 で代用」という確認が出ました。ヒラギノ角ゴシックには「Regular」という太さがないためで、表示は W4 で問題ありませんでした。

VectorCraftのSVG書き出しと読み込みを試す

SVG で書き出すと、「SVG オプション」の画面が日本語で開きます。SVG のバージョン、CSS の書き方、オブジェクト ID の付け方、小数点以下の桁数などを選べます。

VectorCraftのSVGオプション画面。SVGプロファイル、スタイル、フォント、オブジェクトID、小数点以下などの項目が日本語で並ぶ
SVG で書き出すときのオプション画面。項目名も日本語(2026年10月14日に弊社の Mac で撮影)

書き出した SVG を調べると、横書きの文字はあとから編集できる文字(text 要素)のままでしたが、縦書きの文字は輪郭(パス)に変換されていました。VectorCraft で開き直しても、縦書きの部分は文字として編集できません。保存時には「SVG は VectorCraft の文書が持つすべて(効果・シンボル・スウォッチなど)は保持しない」という英語の注意も表示されます。

逆に、弊社が手で書いた SVG(グラデーションの背景、円、山の形、角丸の長方形、日本語の文字)を開くと、「背景」「図形」「文字」という日本語のグループ名がそのままレイヤー名になり、文字も編集できる状態で読み込まれました。警告も出ていません。

VectorCraftで手作りのSVGを開いた画面。右のレイヤーパネルに文字、図形、背景という日本語のレイヤー名が並ぶ
弊社で作った SVG を開いた画面。日本語のグループ名がそのままレイヤー名になった(2026年10月14日に弊社の Mac で撮影)

Illustratorの.aiファイルはどこまで扱えるか

VectorCraft で .ai として保存したファイルは、中身がPDF 1.7 の「PDF 互換 .ai」でした。macOS で PDF として表示すると、画面と同じ見た目で、日本語の横書き・縦書きも出ています。さらに VectorCraft は、自分の編集データを .ai の中に添付しており、VectorCraft で開き直すと長方形や文字が編集できる状態で戻りました。

ただし、Illustrator の側から見ると話は別です。開発元の資料(docs/file-format-parity.md)によると、VectorCraft はIllustrator の非公開の編集データを書かないため、Illustrator では「ただの絵」として開かれます。README も「Illustrator 自身の .ai ファイルの確実なやり取り」を不足点の筆頭に挙げており、実際のユーザーのファイルでは、レイヤー構造が平らになったり増えたりする(14レイヤーが109になった例)、ガイドが消える、ライブ効果やブラシが見た目だけになる、といった既知の問題が記録されています。弊社の手元には Illustrator で作った .ai がなく、Illustrator も持っていないため、この点は試せていません。

VectorCraftが向いている人・まだ向かない人

向いている人:

  • Illustrator を契約せずに、SVG のロゴや図版を作ったり直したりしたい
  • アカウントやクラウドなしで、パソコンの中だけで作業したい

まだ向かない人:

  • 取引先と .ai ファイルをそのままやり取りする(開発元が未対応の課題に挙げている)
  • 入稿データなど、仕事の本番データを確実に仕上げたい(公開から約2週間の alpha)
  • 縦組みの日本語組版、3D、スクリプト、生成 AI 機能が欠かせない

開発元の ROADMAP の自己評価(10月10日時点)は、Illustrator 2026 の機能の約88%が存在する一方、「実務に使える」度合いは約62%です(一般的なイラストレーターの作業に限ると約65%)。実績のある無料ソフトなら Inkscape も候補になります。違いは「Adobe Illustrator のオープンソース代替」で比較しています。

まとめ:VectorCraftは「SVGの図版づくり」から試す価値あり

VectorCraft は、最初から日本語の画面で、図形・横書きと縦書きの文字・SVG の読み書きが使えました。一方で公式の表示は alpha で、Illustrator との .ai のやり取りはまだこれからです。まずは SVG のロゴや図版づくりなど、.ai に頼らない作業から使ってみるのがおすすめです。

ライセンスや最新バージョン、日本語対応の状況は「VectorCraft の詳細ページ」で随時更新しています。同じ ArtCraft の「PhotoCraft の実機検証」や、13本をまとめた「ArtCraft の Crafting Apps まとめ」もあわせてご覧ください。

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