Lステップの代わりにOSS「L Harness」を使ってみた|月額0円で動く条件と費用

※2026年10月5日時点の各社公式サイトの情報をもとにしています。料金・無料枠は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトで確認してください。

LINE公式アカウントでステップ配信やタグ分けをしようとすると、Lステップのような拡張ツールの有料プランに月5,000円〜3万円台かかり、さらにLINE公式アカウント自体の料金も別にかかります。「この固定費、どうにかならないか」と思って調べている人も多いはずです。

この記事では、Lステップの代わりになるオープンソース(OSS)のL Harness(旧称 LINE Harness)を取り上げます。OSSMatch を運営する私たちは、姉妹サイト「改定ウォッチ」の通知用に2026年9月22日から L Harness を実際に動かしてきました。その運用の事実と、公式価格での比較をもとに、本当に月額0円で動くのはどんな条件かを整理します。

Lステップの費用が気になる人へ:OSS「L Harness」という選択肢

L Harness は、LINE公式アカウント向けの CRM・配信自動化ツールです。MIT ライセンスのOSSとして GitHub で公開されており(2026年10月5日時点で★597、最新版は2026年9月11日公開の v0.24.1)、ソフトウェアの利用料は0円です。

SaaS と違うのは、自分の Cloudflare アカウントの上で動かす点です。VPS は不要で、Cloudflare Workers・D1(データベース)・R2(画像)を使います。

2026年8月19日に表示名が「LINE Harness」から「L Harness」に変わりました。LINE・LINE公式アカウントは LY Corporation の商標で、L Harness は LY Corporation が提供・承認したものではない独立したOSSです(公式リポジトリの BRAND.md に明記)。

運営者は YouTube で「無料で使える」と紹介されていたのを見て知りました。開発者とのつながりはありませんが、「無料で届けたい」という考え方に共感して試しています。

L Harness でできること・できないこと(Lステップとの違い)

公式 README の主な機能を、Lステップでよく使う機能と対応させました。

やりたいこと L Harness の機能
友だち追加後に順番に配信 ステップ配信(分単位で設定)
属性ごとに送り分け タグ・セグメント配信、スコアリング
アンケート・登録フォーム LIFF フォーム(回答を友だち情報に保存)
条件で自動対応 IF-THEN 自動化(7種のトリガー×6種のアクション)、自動返信
外部システムから操作 REST API、TypeScript SDK、MCP サーバー(Claude Code などから操作)

一方で、SaaS なら当たり前にあるものがL Harness にはありません。

  • 電話やチャットのサポート窓口(GitHub の Issue や公式 Wiki で自分で調べる)
  • 止まったときの復旧を任せる先(自分のアカウントで動くので自分で直す)
L Harness の構成:スマホの LINE から Cloudflare 上の処理・データベース・画像保存へつながり、管理画面で確認する
L Harness は Cloudflare(Workers・D1・R2)の上で動き、VPS は使わない

Lステップ・エルメ・UTAGE と料金を比べる(LINE公式アカウント料金込みの総額)

LINE公式アカウントの料金はどのツールでも別にかかります。ここではスタンダードプラン(月15,000円・税別、月3万通まで)を使う規模で、同程度の通数を扱える各ツールのプランを比べました(税込)。

構成 ツール代/月 LINE料金込み/月 年額(合計)
Lステップ スタンダード(3万通) 21,780円 38,280円 459,360円
UTAGE 21,670円 38,170円 458,040円
エルメ(L Message)スタンダード 10,780円 27,280円 327,360円
プロライン プロ 9,680円 26,180円 314,160円
L Harness(Cloudflare 無料枠) 0円 16,500円 198,000円
L Harness(Workers Paid 月5ドル、1ドル150円で仮定) 約750円 約17,250円 約207,000円

計算式は「(ツール月額+LINEスタンダード16,500円)×12か月」です。例:Lステップは 21,780円+16,500円=38,280円、×12=459,360円。為替、Cloudflare の従量課金分、LINE の追加メッセージ料金、構築と保守の工数は含みません。

ただし、小規模なら SaaS でも0円になります。フリープランは Lステップが月200通・タグ10種類まで、エルメが月1,000通まで、プロラインにもあります。LINE公式アカウントの無料プランも月200通までなので、月数百通の段階では L Harness の価格面の優位はほとんどありません。差が出るのは、SaaS の有料プランが必要になる規模からです。

料金以外の条件も違い、Lステップの有料プランには3か月の最低利用期間があります(エルメは縛りなし、UTAGE は14日間の無料体験あり)。

LINE CRM を Cloudflare 無料枠で動かせるのはどこまで? 有料になる条件

「月額0円」は Cloudflare の無料プランに収まることが条件です。L Harness が使う部分の上限を公式ドキュメントで確認しました。

項目 無料プラン 有料プラン(月5ドル〜)
Workers リクエスト 1日10万 月1,000万込み、超過は100万あたり0.30ドル
D1(データベース) 読み取り1日500万行・書き込み1日10万行・計5GB 読み取り月250億行・書き込み月5,000万行・5GB込み
R2(画像) 月10GB・転送量無料 従量
サブリクエスト(1リクエスト内の外部呼び出し) 50回 1万回

L Harness の公式 Wiki(デプロイ解説)では、目安として友だち1,000人以下なら Cloudflare 無料枠、10,000人以下なら Cloudflare の有料プラン月5ドル、と書かれています。

注意したいのは、無料プランで上限を超えると、課金されて続くのではなくエラーで止まる点です(日次の上限は日本時間の午前9時にリセット)。

もう一つ未確認の注意点として、無料プランのサブリクエストは1リクエストあたり50回までなので、大量の一斉配信ではこの上限に当たる可能性があります。L Harness は独自の配信キューで処理を分けていますが、私たちの規模では検証できていません。

なお、改定ウォッチではCloudflare は無料プランのまま運用できています。

無料枠のメーター。上限に近づくと止まる
無料枠の上限を超えると課金ではなくエラーで止まる。規模が大きいなら有料プランへ

L Harness の導入手順(LINE Developers 側の設定が中心)

公式の Getting Started に沿った流れです。必要なのは Cloudflare アカウント(無料で可)、LINE公式アカウント、Node.js です。

  1. LINE Developers で Messaging API チャネルを作る。同じプロバイダー内に LINE Login チャネルも作る(必須)
  2. LINE Login で「ウェブアプリでLINEログインを利用する」をオンにし、Callback URL を設定する
  3. リンクした公式アカウントの「友だち追加オプション」をオンにする
  4. パソコンで npx create-line-harness を実行する(Cloudflare の認証からデプロイ、LIFF 作成まで対話形式で進む)
  5. Messaging API の Webhook URL に、作成された Worker の URL を設定する

運営者は2026年9月22日にこの手順で v0.24.1 を構築しました。今は画面で設定できる仕組みもあるようですが、コマンド操作でもそれほど手間取りませんでした。良かったのは、「LINE の設定画面のどこにある値を入力すればよいか」を丁寧に案内してくれる点です。

導入そのものでつまずいた点は特にありませんでしたが、運用中に気づいた点はいくつかあります。

  • 最初の友だち追加で、追加の通知(follow イベント)が L Harness に届かないことがあった。ブロックして解除し直すと届いた
  • テスト用に登録した友だちの記録は API から削除できない。無効化(フォロー解除扱い)で対応した
  • LIFF フォーム送信後の既定の返信文に宣伝の一文が入る。独自の文面に置き換えた

運用例:改定ウォッチでの LINE 通知の使い方

改定ウォッチ(クレジットカードやポイントの改定を毎日記録しているサイト)では、「持っているカードの改悪だけを LINE で知らせる」仕組みを L Harness で作りました。管理画面ではなく、L Harness の REST API を毎朝のスクリプトから呼ぶ形で動かしています。

  • ブランドごとのタグを31個作成
  • LIFF フォーム「持ち物登録」で持っているブランドを選んでもらい、回答に合わせてタグを毎朝自動で付け外し
  • 改悪が公開されたら、そのブランドのタグを持つ人だけに、変更前→後と適用日をまとめたカード型メッセージを配信
  • 毎週土曜に「今週の改定まとめ」を全員に配信

2026年9月22日から10月5日朝までの記録では、タグを絞った改悪通知を23回、週間まとめを2回配信しました。友だちは知人数名で、該当者だけに届く・タグが自動で付け替わる動きを検証できました。

一方で、改定ウォッチの通知は、2026年10月7日にメールへ切り替えました(メール通知の登録はこちら)。理由は L Harness ではなく LINE 側の費用です。友だちが増えると配信料がかかり、収益化の予定がない通知では将来の持ち出しが不安なためで、もともと実験的な位置づけでした。

タグを持つ人にだけメッセージが届くイメージ
改定ウォッチでは、ブランドのタグを持つ人にだけ改悪の通知を送っている
L Harness の管理画面のダッシュボード。改定ウォッチのアカウントで配信クォータ上限200通のうち23通を使用
改定ウォッチで使っていた L Harness の管理画面(2026年10月7日)。今月の配信は上限200通のうち23通、友だちは検証用の2人

L Harness が向いている人・向いていない人(Lステップと比べて)

向いている人

  • SaaS の有料プランが必要な規模(月数千〜3万通)で、ツール代の固定費を減らしたい
  • LINE Developers や Cloudflare の設定、コマンド操作に抵抗がない(または頼める人がいる)
  • 自社のシステムや AI から API で配信を自動化したい

向いていない人

  • 配信が月数百通までで、SaaS のフリープランで足りている
  • 困ったときに聞ける窓口が必要
  • LINE の配信料そのものを減らしたい(LINE公式アカウントの料金は変わらない)

まとめ:Lステップの代わりに L Harness を選ぶなら

L Harness は Cloudflare の無料枠に収まればツール代0円で、月3万通規模ならLステップ スタンダードとのツール代の差は年261,360円です。一方、配信が少ないうちは SaaS のフリープランでも0円で、LINE公式アカウントの料金はどれでも同じようにかかります。

LINE Developers や Cloudflare の設定から自社で進めるのが不安な場合は、合同会社Edel Hearts のOSS導入支援でご相談を受け付けています。

出典